コラッツ境界前面の軌道経路地図

Boundary-front geometry and finite trajectory atlas
waiting-hall 解析から派生した、有限サンプルの観察ノート(日本語版)

このノートの位置づけ
これは観察的な研究ノートである。 すべての記述は特定の有限(finite)な event/stage テーブルに関するものである。 controlmissfrontflow といった語は、そのテーブル中の行や状態に付けた記述的な名前である。語彙一覧へ。

観測された加速軌道の 有限サンプル(finite-sample)座標軌道を作る試みである。

1.このノートの位置づけと collatz-waiting-hall との関係

本ノートは Waiting Hall の作業からの派生(derivative)である。Waiting Hall とは別のノートとして扱いう。

以前の作業は信号を分離する事、本ノートは行がどこを通るかの座標地図を構築する事である。分類から軌道地図へ移動する。

2.現時点での主な結果

この章は観察とし解釈は §4 に分ける。

前章は、位置条件 P_pos と形条件 S_shape を組み合わせると、観測された miss の集合 M がちょうど切り出せる、という結果で終わっていた P_pos ∩ S_shape = M
ただし、形条件 S_shape だけを見ると、228 件の miss をすべて含む一方で、miss ではない形だけ見ると miss と同じ候補だが、位置が違ったため miss にはならなかった 47 件の行も含んでいた(S_shape \ M)。
本ノートでは、この 47 件の非miss行を主な出発点とし、対比として、3段階の入りそこね連鎖を持つ 120 件の miss 行(depth-3 miss)を見る。

観察 2.1 ― 47件の非miss行にはまとまりがある

この47件は、出口からの距離で見ると、ちょうど3つの位置(35:27, 36:12, 37:8)に集まっている。また、remaining_K_before も狭い範囲 (99:27, 100:10, 101:7, 164:2, 165:1)に収まる。全件が drift ラベルであり、全件が max_avoidance_depth = 2 である。

さらに、動きの形で見ると、この47件は miss 側の形と対応している。たとえば、exit_distance 35 にある非miss行 3->30 は、 exit_distance 3 にある miss 行 3->30 と同じ形を持ち、 transition_k = 5 も一致する。

観察 2.2 ― 下流側では似た経路を通る

47件の非miss行と、3段階の miss 行は、どちらも 16-31:avoid > 8-15:avoid という下流側の経路を通り、 その後 4-7 で捕捉される。

違いはその一つ手前にある。3段階の miss 行は、 32-63 > 16-31 > 8-15 という3つの帯を含む連鎖を持つ。一方、47件の非miss行で見える連鎖 16-31 > 8-15 である。

ただし、47件の非miss行が 32-63 の段階を欠いているわけではない。 32-63 のイベント自体は持っており、違うのはその分類である。

2.3 32-63 では3つの記述子を分けて扱う ―― 分離するのは2つだけ

controls(47)対 depth-3 miss(120)、32-63 stage における比較。
32-63 の記述子controls(47)depth-3 miss(120)ここで分離する?
local event classificationavoid_then_caughtavoid_then_caughtno
chain statusavoid_then_caughtavoidyes
boundary-front position下端、主に R=32 -> 29(44/47)高front、主に R=35/36/37 -> 31/30yes

local event classification は両群とも同一なので分離しない。分離するのは chain status と boundary-front position 。

観察 2.4 ― boundary-front 座標が両群を分ける

controls は last_before_exit_distance ∈ {0,1}(47/47)、depth-3 miss は last_before_exit_distance ∈ {2,3,4,5,7,8}(120/120)。この座標は最終的なバンド位置を境界に揃えて表現し直したもの(last_before_exit_distance = last_before_R − band_lower)だ。
front の表示(display)座標としては有用だが、last_before_R から独立していない

観察 2.5 ― 合流は部分的で、即時ではない

最初の 16-31 の形は部分的にしか重ならず、prefix 分布は目に見えて異なる。 両群とも4-7 捕捉で終わりるが、最終状態の混合は異なる(controls は caught 45/47、 depth-3 miss は avoid_then_caught 115/120)。ペアリングの質もこれを裏付ける。 8-15 の entry shape は 47/47、4-7 の entry shape は 47/47 で一致するが、16-31 の entry shape の一致は 2/47、selected shape の一致は 1/47 である。

2.6 boundary-front 前線構造は複数バンドにまたがって現れる

miss だけに注目するのではなく、すべてのバンドを「境界からどのくらい離れているか」という見方で整理し直した。
すると、下端に近い行・出口に近い行・さらに奥にある行という前面クラスは、 miss イベントが観測されないバンドも含め、十分な行数を持つすべてのバンドに現れた。

一方で、miss と同じ形を持つ行が現れるのは 32-63(159件)、64-127(97件)、128-255(19件)に限られた。また、行の状態をどれだけきれいにまとめられるかを見ると、境界からの位置による分類が、局所的なイベント分類よりもよく効いたのは 32-63 バンドだけであった。

つまり、miss だけを見るのをやめて、全バンドで「境界からどのくらい離れているか」を見直すと、miss と特にきれいに結びつくのは 32-63 帯域だった。

クロスバンドの boundary-front 要約。括弧内は chain status に対する grouping-purity 要約(boundary-front 対 local event classification)で、このテーブルのみを要約したものである。
bandrowsmiss rows現れる front クラスfront は local class より chain status をよくまとめるか?
4-725810lowerno(0.603 vs 1.000)
8-1527440lower, nearno(0.980 vs 0.983)
16-3127440lower, near, deeperno(0.870 vs 0.870)
32-632489159lower, nearyes(0.991 vs 0.885)
64-127175453lower, nearno(0.941 vs 0.984)
128-25524116lower, nearno(0.714 vs 1.000)
256-51130lowerno(0.667 vs 1.000)

棄却された仮説

この有限テーブルで検証し、支持されなかったもの

  • shape 単独で miss-only(偽;47件の controls がその漏れ)
  • shape + transition_k で miss-only(偽;同じ47件が残る)
  • transition_k 単独で controls と miss を分離(偽)
  • local event classification が 32-63 の分岐を説明(偽;両方 avoid_then_caught
  • controls は 32-63 stage を欠く(偽;存在し、分類が違うだけ);両群は 16-31 直後に即合流(不支持)
  • controls は depth-2 miss を上にずらしたもの(不支持)
  • 32-63 は唯一(不支持 ―― contrast が最も明瞭なのがそこであって、そこだけに存在するわけではない)。
  • 3.その後の進展:分類から有限軌道アトラスへ

    後続の監査は「この行は miss か?」を問うのを止め、同じ有限テーブルの上で軌道を route や 数値経路 として描き視点の変更した。

    3.1 Trajectory grammar ― route を有限の辞書として

    各軌道を状態 band|boundary_front|chain_status 上の順序付き route として扱い(連続する重複は圧縮)、 2,750 trajectories144 の異なる compressed routes を得た。最頻の route(64-127 … -> 4-7|…|caught)は 1,081 軌道(prob 0.393)を占める。
    route family は形を要約する。capture_sink_4_7(105 routes, 2,581 trajectories)、branch_at_32_63(114 routes, 2,489 trajectories)、avoid_channel(85, 2,360)、near_front_avoid_route(107, 2,206)、upstream_mixed_64_127(76, 1,754)。
    高エントロピーの prefix が 32-63 にあり、 32-63 は単一の特別な点というより分岐する交差点のように読める。

    3.2 Empirical flow map ― 隣接遷移

    隣接する stage 行を state_t -> state_{t+1} に変換すると、9,806 の観測隣接遷移21 の source states17 の destination states にまたがって得られる(状態コードは band × boundary_front × chain_status)。
    最大の edge は下向きのコンパクトなバンドマップを作る(例: 16-31|near_exit_front|avoid -> 8-15|lower_edge_front|avoid が prob 0.974。 32-63|lower_edge_front|avoid_then_caught -> 16-31|near_exit_front|avoid が 0.760)。分岐は少数の 32-63 状態に集中し、4-7 が主要な捕捉側の受け皿層である。

    3.3 数値軌道の分解 ― ラベルではなく 経路 path の形

    意味ラベルを減らし 数値経路(R_beforeR_afterR_droptransition_kexit_distanceremaining_K_before)を保つと、 2,750 の trajectory traces12,556 の numeric stage rows から得られる。
    終端そろえの中央値により、miss / control の trace がどこで分かれるかを問える。コンパクトな gradient signature は、 miss の trace が異なる終端形(中央値 exit_distance_slope = -0.800k_variation = 7.0)を control/other(0.1005.0)に対して持つことを示す。ここで exit_distance は front ラベルではなく path に沿った段階的な座標として読め、32-63 は単独の対象というより、remaining-K の trace が十分大きく複数の近接 numeric 形が見える領域のように見える。

    3.4 Paired numeric difference ― 共有された道の局所変形

    各 miss から対応する control を終端そろえの index ごとに引くと、210 の miss/control ペア1,173 の aligned pair-step rows が得られる。差は終端 index(-2, -1, 0、いずれも中央値 0)でゼロへ収束し、見える分離はより手前のステップ(-4-3)にある。これは別の経路クラスというより、共有された道の局所変形として読める。

    3.5 座標合わせの比較 ― 見え方は「ものさし」に依る

    同じ数値行を使っていても、そろえ方を変えると見えるものが変わる。ここでは、終端ステップ・開始ステップ・exit_distanceR_before でそろえて比べた。

    終端でそろえると、最後のステップが同じ場所に集まって見える。 開始でそろえると、入口側でどこから分かれるかが見える。 exit_distanceR_before でそろえると、 時間順の軌道ではなく、同じ座標にいる行どうしを比べる見方になる。単一の座標スライスで見た最大差 28.00 は、exit_distance でそろえた座標 0 に現れる。

    要点:miss と control の差は、どの座標をものさしにするかにも部分的に依存する。

    4.解釈

    解釈
    • 局所的なイベント分類と、連鎖の中での位置は別概念である。前者はイベントごとのラベルであり、後者はそのイベントが「出口に入りそこねる連鎖」のどこに位置するかを表す。
      多くの行では両者は一致するが、32-63 では分かれる。そのため、両者を混ぜると分岐を誤って記述することになる。
    • 47件の非miss行は、miss 行の位置ずれした近傍として読める。新しい形の種類ではない。同じ residue の形が、バンド内の位置だけずれて現れ、 miss ではなく drift に落ちている。
    • 32-63 の分岐は、境界からの位置と、連鎖上の状態の組で最もよく記述できる。異なる局所ラベルによる分岐ではない。
    • 地図全体で見ると、32-63 は分岐する交差点のように見える。 4-7 は捕捉側の受け皿であり、miss と control の差は、共有された下向きの道に生じる局所的なずれとして見える。
    • ここで見ている対象は、2の冪で区切られた帯を離れるときの幾何かもしれない。つまり、32-63 だけに固有の現象ではなく、境界に揃えた座標で見える帯の出方そのものかもしれない。

    これらは解釈であり、機構・原因・全整数への一般化を強く主張するものではない。

    5.現在の安全な総括

    コラッツ予想を証明しているのではなく、観測された加速軌道の 有限サンプル座標アトラスを作っている。

    We do not prove the Collatz conjecture; we construct a finite-sample coordinate atlas of observed accelerated trajectories.

    本ノートが記録する進展は視点の変更 ―― miss-vs-background の分類から、有限軌道アトラス(route・flow・数値経路・座標スライス)へ ―― であって、強く主張するものではない。

    6.限界(Limitations)

    • 有限テーブルのみ(finite table only)。 すべての件数・route・遷移・差は、監査した特定の CSV 行の性質であって、整数一般の性質とは主張しない。
    • 証明なし(no proof)。 ここには、観測された行を超えるコラッツ軌道の主張を証明するものではない。
    • 機構なし・因果なし(no mechanism, no causality)。 監査は有限テーブル中の共起と形を記述するだけで、ある行が miss・control・drift である理由を説明しない。
    • コラッツ全体の振る舞いは主張しない(no global Collatz behavior)。 全整数・全軌道・未観測のバンド・漸近的振る舞いについての主張しない
    • controlmissfrontflow は記述ラベルのみ。control は実験的統制ではなく、flow は物理的なベクトル場ではなく、front は境界に揃えた座標クラスである。
    • 派生座標は独立ではない。 特に last_before_exit_distance = last_before_R − band_lower は表示のための再表現であり、新しい変数ではない。
    • ラベルは join 由来。 miss/control ラベルは event-detail CSV から軌道レベルで付与されるため、 route/flow/numeric テーブルはどの route がそのラベルを持つかを示すもので、なぜかは示さない。
    • 本ノートは collatz-waiting-hall の派生であり、merge ではない。 Waiting Hall 章や Paradoxical-Sequence 章を改変するもではない。

    7.ファイル一覧

    主要レポート